旧 山本条太郎別荘
先日、『旧 山本条太郎別荘』の特別公開に行ってきました。
鎌倉には関東大震災以前の建物は寺社仏閣を除いては非常に少なく
多くの建物は被災、倒壊、破損し建て替えられている。
たとえ倒壊を免れたとしても、その後100年近くを経て、木造家屋の耐用年数を超えている。
そのような状況の中、震災をくぐり抜けた点で貴重な建築であり
この建物が別荘建築の至宝といわれる所以である。
『旧 山本条太郎別荘』は大正7年に建設されたとされている。
敷地面積は約5000坪、延べ床面積は約150坪と広大であり
標高約40mの高台に立地している。
したがって茶室や広間からは長谷の街並みや海岸線が見下ろせ
眺望に恵まれている。
私室と客室でディテールを変える細かい気配りや
広間の照明に籐で編んだバッタのオブジェを配した遊び心
巨大な沓脱石や踏石、宙に浮いたように見える蹲が置かれた邸園など
見どころはたくさんある。
中でも敷地奥にある茶室は素晴らしかった。
敷地形状に合わせて半階上がった部分に躙り口があり
外界と切り離された独立した空間が築かれている。
庭に降りると東屋があり庭を見通すことができる。
当時の政界の大物が鎌倉における別荘の暮らしを
どのように楽しんでいたのかを想像するのは非常に楽しい。
おそらく条太郎氏は会合や茶会を通して空間そのものを
味わって楽しんでいたのではないだろうか。
建物はそのための装置に過ぎないのかもしれない。