どーなるよ??
『向こうから話しかけてくる人は詐欺師だと思え』 日本人向けのガイドブックには大抵このようなことが書いてある。例えばタクシーで知らないところへ連れて行かれて、カツアゲにあうとか、宝石店に連れて行かれて高価な宝石を買わされるとか、安く女の子を紹介するといわれてボッタクられたりだとか。タイの友達が言っていたが悪い人はホントにいっぱいいるらしい。 チェンマイで寺院巡りをしている最中、道端で声を掛けられた。いつもなら無視して通り過ぎるところだけど、なぜか足を止めてしまった。 この先に安く宝石が買える店があって今から奥さんに宝石を買いに行くんだけど、一緒に行かないか、と誘われた。 来たかっ!!と思った。ガイドブックにある通りではないか。実は自分の買い物に付き合わないかというのはただの口実で、最初から僕に高価な宝石を買わせるのが目的なのではないか。普通なら無視して立ち去る場面だが、僕は面白がって少し話を聞いてみることにした。 話を聞いていると、以前2年ほど日本に住んでいたことがあるらしく、何をしていたのかと聞くとボクシングのトレーナーだと言う。彼は20年前、バンコクのムエタイチャンピオンだったらしい。話しかけてくる人は大概、前に日本に住んでたとか行ったことがあるとかって言ってこちらを安心させて油断させようとする。これは詐欺師の常套手段だ。ボクが中国人なら中国に住んでたと言っていたかもしれない。 いよいよ怪しくなってきた。 悪い人を嗅ぎ分けることができる嗅覚を持ち合わせているボクは、これまで一度もトラブルに巻き込まれたことはないけど、それでもまだ判断しかねていた。 疑いの眼差しを向ける僕に、その人は財布からあるものを取り出し見せてくれた。それは日本ボクシング協会会長の名刺だった。これを信じてよいものかどうかしばらく思案していたが、結局どうしたのかといえば一緒に行くことにしたのだった。 行くと決めたにもかかわらず、まだ少し自分の判断に迷っていたが、相手の車の助手席に乗り込む。 さてさて、どーなるよ 俺?? <続く>