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通過儀礼的、愛。


誰かをはじめて好きになる。というめくるめく感覚、純粋でまっすぐな気持ちを書き綴った前半に対し、純粋でも初々しくもないけど、より現実に即したものの見方で恋愛ができる大人へと成長していく姿を描いた後半の2部構成からなる若者たちの物語。 若さゆえの理想主義的恋愛感は時に「絶対」という言葉を安易に使いたがる。しかし、ある段階を経ると【過去】も【未来】も「絶対」と言えるものなどなく、確かなモノは【今】だけだ、という客観的な視座を得る。 そのような段階に至らしめる恋愛をイニシエーション(通過儀礼)という言葉で表現している。つまり前半部分がそのイニシエーションで、後半部分でもう一段階進んだ恋愛模様を描いている。 ・・・・・と思って読んでいると最後の最後でとんでもない「オチ」が待っているという衝撃的な物語。 殺人どころか事件も起こらないし犯人も刑事も出てこない。SF要素も一切ないのに、これはれっきとしたミステリーだ。どこからどう見てもただの恋愛小説なのに・・・。 これがミステリーだと気付く人がどれだけいるんだろうか。最後の2ページから「おやおやっ?」って思うようになってって、最後の2行で今まで読んでいたモノの意味がガラッと変えられてしまう。 「自分は今まで何を読んでいたのだろう」と言うより、「何を読まされていたんだろう」と思うことウケアイだ。2読目はきっと全く違った物語として読めるはず。 構成と叙述テクニックだけでミステリーを成立させてしまう。そんな小説に少しでも興味を持った人。お勧めです。


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